【第1分科会 個人発表1】

司会:合場敬子

 

「⼥の職場」と「⼥の仕事」:美容産業従事者女性は「女性職」としての自らの職場・仕事をどう解釈するのか

永山理穂

 本報告は、美容産業従事者女性へのインタビューデータをもとに、彼女たちが「女性職」としての自らの職場・仕事をどのように解釈しているのかを示すものである。彼女たちは、女性が多い職場でこそ男女平等が実現できると語り、「女の職場」に付与されるネガティブなステレオタイプを否定していた。また、⼥性特有の感覚や経験を活かせることから、美容産業での仕事を「⼥性向き」として解釈していた。そのいっぽうで、管理職などのトップの地位に就き、独⽴して稼ぐのは男性であるという解釈が⾒られた。 

 


ジェンダーの観点から美の不均衡を考える

石川茉耶

 本発表は、何を美しいとみなすのかに関する美の理論にまつわるジェンダー的問題点を、美学の観点から明らかにすることを目的とする。これまで美に関する説明は、男女関係なく全ての人にとって中立的な概念であると考えられてきた。本発表では、こうした理論がいかに権力を含む男性中心的な構造であるかを、例えば芸術作品(女性のヌード作品)に対する特定の鑑賞態度を要求することなどをもとに見ていき、中立という幻想のもと構築された美的理論を批判する。

 

 


もう一つの沈黙:性暴力被害者支援において作動する表象=代理の暴力性に着目して

井上 瞳

 近年、PTSDやトラウマの普及に伴い、性暴力被害者支援の領域では、沈黙を破ることを評価する動きが広がっている。しかし、当事者が直面するのは「言葉を持たない、語らない」といった字義通りの沈黙だけではない。本報告では、精神医療化を通じ専門化しつつある支援被支援の非対称関係に着目し、当事者が語っているにも関わらず支援者が聞き届けない、当事者が語っていないにも関わらず支援者が代わりに語るといった表象=代理の作用として課され生成するもう一つの沈黙について考察する。

 

 


「接待」と「国際交流」:招聘業界における「興行」の言説編成の考察

大野聖良

 

 

本報告では、日本社会において在留資格「興行」がどのような問題として形成・議論されてきたのかを、招聘業界の言説に焦点をあて考察する。まず在留資格「興行」に携わるアクターを概観したうえで、招聘業界・法務省入国管理局(当時)・政治家等の間で展開された在留資格「興行」の適正化の議論をたどり、招聘業界において外国籍者による「興行」が人種化・ジェンダー化された就労として言説化されてきた点、また在留資格「興行」はその合法性と経済をめぐり、「日本人」「男性」たちの闘う場であった点を示す。